【心理学】虐待はなぜ無くならないのか?その2
今回は少し深く虐待について触れてみたいと思います。
自分の勤務している施設にも多くの被虐待児が入所しています。皆さん、虐待を受けた子に対してどんなイメージがありますか?
実は受けてきた虐待の種類によって、その子のおおよそのパーソナリティや症状が変わってきます。
①身体的虐待を受けた子
→攻撃的な発散。暴力によって支配したり解決するしか方法がわからない。激しいフラッシュバック。気持ちのアップダウンが激しい。
②心理的虐待を受けた子
→認知の歪み、記憶力の低下。発狂や暴言でしか気持ちを表現出来ない。自尊心がなく、大切に思う心が芽生えづらい。
③性的虐待を受けた子
→対人距離の異常(近いか拒絶するか極端)。境界線のなさ。自傷行為にはしりやすい。抑圧傾向。
④ネグレクトを受けた子
→無気力、不注意。多動で何かに敏感な側面がある。達成感が持てず、挫折しやすい。
…まだまだ沢山ありますが、ざっとこんな具合です。
しかし、どの虐待にも共通する点があります。
❶愛着障害
→乳幼児期に形成される母子との関係は、その後の人生(人格形成)に大きな影響を及ぼしますが、その大切な時期に愛情を受けられないと…愛着障害になってしまいます。
愛着障害はとても深いのでまた後日に触れましょう。
❷自己肯定感が低く自己愛が高い
→誰も自分のことを愛してくれない。守ってくれない。そんな状況で、あなたならどうしますか?
そうですね。自分で自分を愛するしかないですよね。なので、自分の心を保つために、自分のことを過剰に高く評価し、プライドも高くなりやすいです。
しかしこれは本当の愛ではないので、脆く、突如として情緒不安定になり、「自分なんか必要ないんだ。死んでも変わらないや」と肯定感を持つことが出来ません。
❸発達の遅れ
→虐待を受けることで脳に悪影響を及ぼし、様々な部位の正常な発達を妨げます。言語や知能のみならず、運動性の神経すらも阻害されます。
❹トラウマ
→身体的虐待、性的虐待問わず、虐待はトラウマを残します。トラウマチックな状況・及び類似した危機の時にパニックに陥り、フラッシュバックが襲い掛かります。重度だと正気を保てません。
…これまた一部ですが、こんな具合になります。
いかがでしょうか?児童虐待はこれだけの爪痕を残し、傷が癒えるまでは相当の時間を要します。
癒えないまま保護者となったとき。保護されるべき対象に牙がかかり、連鎖していくのです。
虐待は児童のみに限定されません。高齢者や障害者など、保護を要する者に向けられれば、全て虐待となりえます。
また、日本人特有のものでもありません。世界中でも虐待は問題視されており、日本にいる外国人が虐待で子供を引き剥がされるなんてこともよくあります。
うちの施設にも外国人やハーフの子はかなりいます。
虐待研究は日々進歩しており、生理心理学の分野や、脳科学の分野からも論文が発表されてきています。
一刻も早く、研究の成果が現場の知となって生かされることを祈るばかりです。